当センターの声明・要望

新型コロナウイルス感染予防を理由とした⾯会制限に関する精神科病院への要望(2022年2月)

 新型コロナウイルス感染予防のため、精神科病院で⾯会の制限が⾏われています。当センターとしても、感染予防の重要性を理解し、これに協⼒したいと考えています。

 ⼀⽅で、精神科病院に⼊院されている⽅にとって、⾯会は、様々な⾯で重要な意義を有することが指摘されています(⽇本弁護⼠連合会2021年4⽉16⽇付「コロナ禍における社会福祉施設・医療施設での⾯会機会の確保を求める意⾒書」 ※参照)。たとえば、⼼⾝の健康の維持や、⼈とコミュニケーションを取り、社会とのつながりを感じることで得られる幸福感を充⾜させるといった意義があります(同)。このような重要な意義のある⾯会は、幸福追求権(⽇本国憲法13条)や訪問を受ける⾃由(国際連合「精神疾患を有する者の保護及びメンタルヘルスケアの改善のための諸原則」13の1-c)として保障されています(同)。精神保健福祉法上も、⾯会は原則として⾃由とされています(同法36条1項、2項、37条1項・「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第三⼗七条第⼀項の規定に基づき厚⽣労働⼤⾂が定める基準」(昭和63年厚⽣省告⽰130号))。

 特に、コロナ禍で、病院からの外出が制限される場合も多く、⼊院されている⽅は地域社会から孤⽴しがちです。このような状況では、地域社会とのつながりを保つ上で、⾯会の重要性が⼀層⾼くなっているといえます。⼊院されている⽅の地域社会に包摂される権利(障害者権利条約19条)や、更には、地域社会で⽣活するために不可⽋な情報を獲得し、発信する権利(同条約21条)を実効化する観点でも、⾯会は貴重な⼿段であると考えられます。

 感染予防のため、⾯会の⽅法は、必要な限度で制限を受けざるを得ない場合もあります。しかし、以上のような⾯会の重要性からすると、⾯会について、必要以上の制限を加えることや、⾯会の実施⽅法及び回数などを画⼀的に制限することは、避けるべきと考えます。上記の⽇本弁護⼠連合会の意⾒書も、地域の感染状況に応じて、感染防⽌と⾯会機会の確保のバランスの取れた対応を⾏うように努め、⼀律の⾯会禁⽌など画⼀的な対応を講じることがないよう

求めています。

 当センターとしては、精神科病院に対し、感染予防のため対⾯での⾯会を制限する必要性が⾼い場合であっても、オンライン⾯会(ZOOMなど)を活⽤するなど、感染防⽌をしながら、⾯会に代替する⽅法を実施するよう求めます。また、オンライン⾯会では⾯会の⽬的を果たすことが難しい場合(ZOOMなどを利⽤できない家族・知⼈との⾯会や、オンラインではコミュニケーションが困難な場合等)には、ケースバイケースで実施⽅法を⼯夫することで、⾯会の⽬的が果たせるよう求めます。さらに、いずれの⽅法であっても、⾯会・オンライン⾯会等の回数については、画⼀的に制限するのではなく、⼊院されている⽅や家族等関係者の必要性や緊急性の程度、病院側の⼈員の余裕等を考慮して、個別のケース毎に柔軟に対応するよう求めます。

※https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2021/210416.html